
私、おっちょこちょいだから、経理は無理かもしれない
そう思って、この記事を開いた人が多いはずです。
振込の金額を、一桁間違えかけた。上司に指摘された。今月これで3回目。数字が合わなくて、原因を探すのに半日溶けた。そのたびに、自分の性格に、経理失格の烙印を押しかけている。
でも、先にお伝えします。
経理という仕事は、ミスをしない人間を前提に、設計されていません。
人間はミスをする。その前提で、ダブルチェックがあり、突合があり、承認フローが組まれている。それが経理という仕事です。
私自身、新人時代に数字の転記でミスをして、背筋が凍る思いをしました。この記事では、その実録も交えながら、「ミス=性格の欠陥=経理失格」という三段論法を、真ん中から壊していきます。
経理は「ミスをしない人」の仕事ではない
まず、一番大事なことからお話しします。
多くの人が、経理をこう誤解しています。「1円のミスも許されない仕事だから、慎重で几帳面な人しかできない」と。
でも、実際の現場は違います。
経理の仕事は、人間がミスをする前提で組まれています。だからこそ、ダブルチェックがあり、突合があり、承認フローがある。一人の注意力に頼っていたら、会社の数字は守れないからです。
つまり、経理とは「ミスをしない人」の仕事ではなく、「ミスを仕組みで防ぐ人」の仕事です。

経理は、ミスを防ぐ仕組みを回す仕事!
上司のチェックで止まったのは、あなたが失格だからではない
もし今、あなたがミスを指摘されて落ち込んでいるなら、事実を一つお伝えします。
そのミスが上司のチェックで止まったのは、仕組みが正しく機能したということです。あなたが失格だという意味ではありません。
チェックは、ミスを見つけるために存在します。そこで見つかったなら、仕組みは設計どおりに働いた。あなたは、その仕組みの中で仕事をしていたということです。
むしろ、自覚がある人ほど事故を起こしにくい
もう一つ、逆説的な話をします。これは私が現場で見てきた実感ですが、「自分はおっちょこちょいだ」と自覚している人ほど、実は経理で事故を起こしにくいんです。
なぜなら、その自覚がある人は、仕組みに素直に頼れるから。確認を省略しない。ダブルチェックを面倒がらない。「自分は間違えるかもしれない」と思っているから、慎重に手順を踏みます。
逆に危ないのは、「自分はミスをしない」と思っている人です。確認を飛ばし、手順を省き、自分の記憶や感覚を信じてしまう。
自覚は、弱点ではありません。仕組みを使いこなすための、入口です。
新人のミスは、性格ではなく「習熟」の問題
経理1年目、2年目でミスが続くと、「私はこの仕事に向いていない」と思い詰めてしまいます。
でも、新人期のミスの大半は、性格の問題ではありません。業務の型が、まだ体に入っていないという、習熟の問題です。
私が新人時代にやった、転記ミスの話
私自身の話をします。
新人の頃、数字の転記でミスをしました。Excelの行がズレて、別の数字を拾ってしまったんです。
発覚したのは、数字を突合したときでした。一致するはずの項目が、一致しない。それを、上司に指摘されました。
あの瞬間の感覚は、今でも覚えています。背筋が凍るような思いでした。
上司は、怒ってはいませんでした。ただ、「合わないよ」と事実を伝えられただけです。それでも、自分の中では十分すぎるほどこたえました。
慌てて原因を探して、なんとか見つけることができたので、大事にはなりませんでした。でも、そのとき一番こたえたのは、ミスそのものよりも、あることに気づいたからです。
自分では、確認したつもりになっていた。
見たつもりで、見ていなかった。確認したつもりで、していなかった。これが、一番怖いことでした。
「確認したつもり」は、性格ではなく手順の問題
ここが大事なところです。
私は、確認をサボったわけではありません。確認した「つもり」だったんです。つまり、注意力の問題ではなく、確認の手順が甘かったということです。
だから私は、そこから二重チェックを心がけるようになりました。一度目で見て終わりにせず、必ずもう一度、別の角度から確認する。
性格を変えたわけではありません。手順を変えただけです。それで、同じミスは起きにくくなりました。
新人期のミスは、性格の欠陥ではなく、まだ手順が固まっていないサインです。手順を作れば、ミスは減ります。
経理に向いているかどうかで悩んでいる人は、こちらの記事もあわせて読んでみてください。ミスの原因を、習熟・職場・適性の3つに切り分けて解説しています。
ミスが「増えた」ときは、性格ではなく環境を疑う
一方で、こういう人もいます。
「1年目、2年目は普通にできていたのに、最近になってミスが増えた」
3年目、4年目でミスが増えたとき、多くの人は「自分の集中力が落ちたのか」「やっぱり向いていないのか」と、自分を責めます。
でも、待ってください。ここで見るべきは、性格ではなく環境です。
「ミスが増えた時期に、何が変わったか」を洗う
こう自問してみてください。
「ミスが増えた時期に、何が変わっただろうか」
たとえば、こんな変化がなかったでしょうか。
- 担当業務が増えた、あるいは他の業務を兼務するようになった
- 人が減って、一人あたりの処理量が増えた
- 割り込みの多い席に移った、あるいは電話対応が増えた
- 締め切りが前倒しになった、残業が常態化した
これらは、すべて集中を削る環境変化です。人間の注意力には限りがあるので、業務量が増え、割り込みが増えれば、ミスは増えます。当たり前のことです。
つまり、ミスが「増えた」なら、性格が変わったのではなく、環境が変わったと考えるほうが自然です。
そして、環境が原因なら、それはあなた個人の問題ではありません。
もし業務量や体制の問題が明らかで、改善の見込みがないなら、環境そのものを変える選択肢もあります。同じ経理でも、会社が変われば、処理量も体制もまったく違います。
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ミスとの、正しい付き合い方
ここからは、実務の話です。ミスを減らすために、明日からできることを3つお伝えします。
すべてに共通するのは、ミスを「自分の性格」ではなく「プロセスの穴」として扱うという発想です。
①ミスノートをつける
ミスをしたら、記録します。何を、いつ、どんな条件で間違えたか。
大事なのは、反省文を書くことではありません。反省は、次のミスを防ぎません。記録して、パターンを見つけることが目的です。
②発生条件を記録する
ミスノートを続けると、自分がミスをする「条件」が見えてきます。
たとえば、疲れているとき。急いでいるとき。割り込みが入った直後。同じ作業を長時間続けたあと。
条件が分かれば、対策が打てます。「割り込みのあとは、必ず前の作業を最初から見直す」といった、具体的な手順に落とせるからです。
これも、性格を変える話ではありません。条件を潰す話です。
③報告の型を持つ
ミスに気づいたとき、一番やってはいけないのは、隠すことです。経理のミスは、時間が経つほど影響が広がります。
報告は、早く、この順番で伝えます。
- 事実(何が、どうなっているか)
- 影響(どこまで及ぶ可能性があるか)
- 対応(今、何をしているか、何をすべきか)
この型を持っておくと、慌てているときでも、必要なことを漏らさず伝えられます。
私が転記ミスをしたときも、慌てて原因を探して、見つけて、報告しました。早く動いたから、大事にならなかった。それだけのことです。
まだ勉強も始めていない、入口で迷っている人へ
ここまで読んで、「自分はまだ経理ですらないのに」と思った人もいるかもしれません。
経理に興味はあるけれど、「おっちょこちょいな自分に務まるのか」と、勉強を始める前から足が止まっている。テキストを買う前に、性格の適性検査をしに来た。そんな人です。
その人に伝えたいのは、これです。
経理は、性格を審査される場所ではありません。仕組みが、性格を補ってくれる場所です。
だから、性格で自分に不合格通知を出すのは、まだ早いです。
そして、適性を頭の中で悩み続けるより、はるかに早い方法があります。簿記3級のテキストを、実際に開いてみることです。数字を扱う感覚が、自分に合うかどうか。それは、頭で考えるより、触ってみたほうが1日で分かります。
うっかりミスに、長く深く悩んできた人へ
最後に、少しだけ触れておきたいことがあります。
うっかりミスの多さに、子どもの頃から長く悩んできた人もいると思います。「おっちょこちょい」という軽い言葉では、片付けられない重さを抱えている人です。
私は医療の専門家ではないので、そこに踏み込んだことは書けません。この記事でお伝えできるのは、あくまで「ミスを個人の注意力に頼らず、仕組みで防ぐ」という、経理の実務の話までです。
もし悩みが深く、日常生活にも影響が及んでいるなら、専門の相談先に一度話してみることも、選択肢の一つだと思います。一人で抱え込まないでください。
まとめ|経理は、ミスを仕組みで防ぐ人の仕事
最後に、この記事の要点をまとめます。
「ミス=性格の欠陥=経理失格」という三段論法は、成り立ちません。経理は、ミスをしない人間を前提に設計されていないからです。
大事なのは、ミスの原因を切り分けることです。
- 新人期のミス → 性格ではなく、習熟の問題。手順を作れば減る
- ミスが増えた → 性格ではなく、環境の問題。業務量や体制の変化を疑う
- 確認したつもり → 注意力ではなく、確認の手順の問題。二重チェックで潰す
そして、ミスは「自分の性格」ではなく「プロセスの穴」として扱う。ミスノートをつけ、発生条件を記録し、報告の型を持つ。
私も、転記ミスで背筋が凍る思いをしました。でも、性格を変えたのではなく、手順を変えたことで、同じミスは起きにくくなりました。
自分をおっちょこちょいだと自覚している人は、仕組みに素直に頼れます。それは、弱点ではなく、経理で生きていくための入口です。
性格を責める前に、仕組みを疑ってください。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。あなたの毎日が、少しでも軽くなることを願っています。




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